言うに言えないこと、言えなかったこと、
特に言わんでもよかったこと、なんかを書くページ
青井橘「手紙書けばよかった。」
いや、じゃあ、機械の中に言葉並べんなよ、
っていう意見もありですが。
フライドチキンにお詫びをしました。
タイトルから飛べます。
以後、手紙はこちらにします。
2009年7月28日火曜日
2009年7月24日金曜日
言葉
ラベルにおいて、おやのかたき、のように並んでいるのは、
詩とはいえない言葉の羅列です。私は言葉で、世界を、把握します。
アホみたく引っ張り出すのもどうかと思ったのですが、
これらはだいたい、2年半くらい前から6年半くらい前までの間に書いた詩で、 無差別なかんじでフォルダに入っていたり、大学時代の日記の中に残っていたりするものです。
それ以前にも、膨大に書いていたのだけれど、 たとえば高校時代のなんかも大学ノートにたくさん、たくさんあるのだけれど。
大学時代という幸福で贅沢な時間に書いたものを中心に、
このブログを準備している中、羅列しました。
大雨が続く深夜、いっきに。
大雨がやまぬうちに終わらせなければならぬのだ、となにやら急いで。
いっきに並べると、読んでくださった方がつまんないのにあたって、
さらに読んでもらえないという危険性もあるのですが、まあまあ。
つまんないつまんなくない言い出したら、そもそも。
物語というのか小説を書くようになってから
こういうものを書く快感に逃げてしまいそうなので、しばらくやめてました。
でも、なんか、やっぱり好きだし、大事だし。
いろいろな感情生活がありますね。
誰にでも、交換できない特別感でいっぱいの大切なものがありますね。
いや、誰にでもと薄めるのはなんか、誰にでも失礼なんでやめときます。
泣いたり笑ったり怒ったりして、渦中の時にはなんにも書けないことになる。
書かないでも、ちゃんとご飯食べたりおしっこしたりしてるなら
それがすごくいいように思う。
書くことも忘れて生きれてるときって、いい、ように思う。
でも書かなくてもいいということと、書けないということは、
あまりに違い、あまりにも振り子なので、
その中間の時に、なんか、書いていたようです。
とってもにくたらしい事実というか実感ですが、それは変わらない気がする。
これからも書くのだったら、ブログで時折過去に書いたものを載せるより、
これから書くものを書けばいいので、いくつかを、いっき方式にしました。
言葉は、からだ。
かっこつけるからだ、うそつくからだ、寝たふりするからだ、
そんな自分に酔うからだ、そんな自分を笑うからだ。
酔って笑ってバカにして、でもけっきょくけっきょく、またも、
そのバカバカしくも美しい時間という現実っぽいものごとのなかに
偽ものか本ものかではない、誰が決めるのそんなこと、のなかに
あり、ある、ものごとのなかに飛び込んで泳ぐ、からだ。
からだ、がなくては、はじまらない。
感情的と、理屈っぽさに引き裂かれつつ、けっきょくからだ。
そしてからだが言葉がなくなったとき、ない場所に、
あるもんがある。脳みその中には残らないもうひとつのからだ。
詩とはいえない言葉の羅列です。私は言葉で、世界を、把握します。
アホみたく引っ張り出すのもどうかと思ったのですが、
これらはだいたい、2年半くらい前から6年半くらい前までの間に書いた詩で、 無差別なかんじでフォルダに入っていたり、大学時代の日記の中に残っていたりするものです。
それ以前にも、膨大に書いていたのだけれど、 たとえば高校時代のなんかも大学ノートにたくさん、たくさんあるのだけれど。
大学時代という幸福で贅沢な時間に書いたものを中心に、
このブログを準備している中、羅列しました。
大雨が続く深夜、いっきに。
大雨がやまぬうちに終わらせなければならぬのだ、となにやら急いで。
いっきに並べると、読んでくださった方がつまんないのにあたって、
さらに読んでもらえないという危険性もあるのですが、まあまあ。
つまんないつまんなくない言い出したら、そもそも。
物語というのか小説を書くようになってから
こういうものを書く快感に逃げてしまいそうなので、しばらくやめてました。
でも、なんか、やっぱり好きだし、大事だし。
いろいろな感情生活がありますね。
誰にでも、交換できない特別感でいっぱいの大切なものがありますね。
いや、誰にでもと薄めるのはなんか、誰にでも失礼なんでやめときます。
泣いたり笑ったり怒ったりして、渦中の時にはなんにも書けないことになる。
書かないでも、ちゃんとご飯食べたりおしっこしたりしてるなら
それがすごくいいように思う。
書くことも忘れて生きれてるときって、いい、ように思う。
でも書かなくてもいいということと、書けないということは、
あまりに違い、あまりにも振り子なので、
その中間の時に、なんか、書いていたようです。
とってもにくたらしい事実というか実感ですが、それは変わらない気がする。
これからも書くのだったら、ブログで時折過去に書いたものを載せるより、
これから書くものを書けばいいので、いくつかを、いっき方式にしました。
言葉は、からだ。
かっこつけるからだ、うそつくからだ、寝たふりするからだ、
そんな自分に酔うからだ、そんな自分を笑うからだ。
酔って笑ってバカにして、でもけっきょくけっきょく、またも、
そのバカバカしくも美しい時間という現実っぽいものごとのなかに
偽ものか本ものかではない、誰が決めるのそんなこと、のなかに
あり、ある、ものごとのなかに飛び込んで泳ぐ、からだ。
からだ、がなくては、はじまらない。
感情的と、理屈っぽさに引き裂かれつつ、けっきょくからだ。
そしてからだが言葉がなくなったとき、ない場所に、
あるもんがある。脳みその中には残らないもうひとつのからだ。
田んぼのあぜ道が果てしなく濡れてるだけの砂漠に思えた頃
絶対的に断絶し
圧倒的に存在している別のもの
絶望的に大丈夫
すばらしい恋心でもって、
一瞬を信じさせてくれる恋心でもって、
なんで生まれてきたんですか、
そいでこんなに痛いんですか、
という 誰に向けていいかわからないナイフを忘れさせてくれる
なんか、恋心という名前のついた優しさでもって、
田んぼの脇に車を止めて、啓太君とキスしてました19歳
青い匂いが田んぼの水分から流れてきました5月頃?
好きというか恋というか、
蛙というか鴨というか有機農法というか
そんなこともいっさい知らん私は
別に車でセックスもいいですよ
あぜ道でもほら、月明かりに照らされて心地よさげ
月は基本的に見てみぬふり派の包み込み派
セックスという名前のついた会話でもって、
昨日と今日をつぶし塗り、明日の白紙を用意する
それが君と私の19、はたち
啓太君はその日、掛け持ちバイトの二つ目が終わった私
12時近くにくたくたになった私を迎えにきてくれた時
ポンコツ中古車の窓を手動であけて、
小さいオレンジの薔薇を一輪だけくれました
「なんで」
「お疲れ祝い」
「そんなんいやだ」
互いの違うことになってる器官をどうこうしながら、
けっきょく何がしたかったかといえば、わかりません
ただ、ああそうか
つながることがこのままであってくれれば
けれどもつながりきることはできないという
喜びも悲しみも幾年月、むかつくことに多分永遠
それでもなんか、救われた
それでもなんか、幸せだった
啓太君はいろいろくれた
小さい偽物の石が入った指輪をくれた時
なんか可愛らしいピンクの、手触りのいいケースを開けると
そこには缶ジュースのプルタブがちぎって入れられてた
鈍いスチールの輝き、ていうか輝かないけど
「なにこれ」
「うそうそ」
啓太君はポケットから、紫色のキラキラしたのがのってる
銀の指輪を出しました
びっくりしていた私をにひひと笑い、
本物は高くて買えないごめん、と言ったけど、
それは鉱物としてどうかなだけで、
めちゃくちゃ本物だったので、涙が出た
そんなことが重なり合って、
体が重なり合うよりも、重なったものごとが、
好きをつくっていたので、
逆に、車でセックス的なこともいいですよ、
と思っていたわけです
しかし肉体的ドッキング運動にはいたらず、
車の中で啓太君の横顔を見て、声を聞きながら
家出した家に帰るという
想像するだけでも怖いことから一分一秒でも逃げようと、
ていうか現実そのものから逃げようとしていた私の矢先、
ポンコツ車の開いた窓から、でかいこぶしが飛び込んできた
父は柔道黒帯で、世の悪い人をまとめてぶち込むことが生業だったので
その威力、私にはNASAくらいわかんない
啓太君は、飛突如ぶちこまれた他人のこぶしにびびっていただろう
痛いとは言わなかったけれど、痛かったに違いない
父にとって敵、親にとって敵、
したがって殴る相手もいつだって 私のはずだったのに
啓太君は共犯者
殴られても車から降りてひるまずに挨拶する
折り目正しい共犯者
「わたし悪い人じゃないし」
私は泣きながら、怖い父に蹴りを入れ、
しかしかすりもせず、こけそうになる
自分の弱さにうんざりして
「なんにも、どうでも」とかわけわかんないこと言いながら
そのままあぜ道方面に走って逃げた
父は何事か大声で叫び、家方面に向かって見えなくなる
私は開発途中の住宅街の
果てしなく他人事的な、へーベルハウス的な明かりをぬけて
果てしなく続くあぜ道に入り、 草が夜露に濡れて、足にからみつき
けっきょく、こけた
安い白のエナメルサンダルも気にいっていたし、
古着であっても私には新しい、水色のミニスカートだって
あと3シーズンは現役のつもりだったのに、
泥と草と、なんかよくわかんない紐みたいなものに汚されて
泣いた
植えたての苗を、靴が踏みつけてて、
緑の小さい、いのちこれからの植物と、
何回も死んだような化学的材質のサンダルが
ぜんぜんマッチせず、絵的にもダメな感じでいっぱいで、
よけい泣いた
生れ落ちた回転軸の
永遠にまわるミスマッチ
なんでこんなに合わないの?
啓太君は泣きじゃくる私の隣に座った
「おしり濡れるよ」
鼻水すすりながらそういっても、答えない
怒ってるのかな もう、誰にも怒られるのは嫌だな
啓太君でも嫌だな
しゃくりあげていると、
「とりあえず、まだ帰らなくていいし」
「なんで」
「帰りたいときは、一緒についてくから」
暗くて見えなかったけれども
啓太君の頬のかたっぽには、父の痕跡が残っていて
怖くて知りたくなかったけれども
それは私の痕跡でもあるのだから、
手探りでさすると、啓太君の肌はぼんやり、暖かかった
それは痛みの暖かさなのだと
私の痛みを啓太君の頬に伝染させてしまったのだと 思ったら
また涙と鼻水が出すぎて窒息しかかる
男でも、女でも、いいんだな
私が男でも、啓太君を好きになったかもしれない
ならべつに女でもいいかもしれない
そのときはじめて、どっちでもよくなった
啓太君と小さい古い家を借りて暮らし始め、
クラムチャウダーを作りながら、
給湯器が壊れてるから水が刃物レベルに冷たくてひりひりして、
でもクラムチャウダーがあたたかかったので、
なにもかも暖かかったので、ぐっすり眠る
毎日毎日、ご飯を作り、たくさん話しながら食べ、
寒い日は紅茶を飲んで眠る月日
あいかわらず、時おりセックスしちゃった 君と私の19、はたち
でもせっかくだから、もっと暖かくなればいいと思いながら
そのよくわからないけど
みたとこ明らかに異なる器官を使わせてもらったけれど
えらく気持ちよかった
シュウマイ食べてるときも、寝顔見ているときも
見られてるの知りながら薄目のときも
自分以外が使ったあとの、お風呂の匂い
石鹸と汗のちょっとすっぱい匂いを嗅ぐときも
同じくらい 気持ちよかった
独占したりされたりすることがセックスで
それは向かうところ自己と他者への破壊活動なんですか
あるいは強弱
あるいは売買
エロゴ問答の16歳はびょーんと過ぎ、
どっちでもよくなった
濡れた田んぼのあぜ道にはいろんな種類の生き物が
動くものも動かないものもふくめて、
いったいなにものなのかってことも みんなどっちでもよくなった
絶対的に断絶し
圧倒的に存在している別のもの
絶望的に大丈夫
砂漠だとしても、小さな水場におたまじゃくしを放てばいいのだと
勝手に蛙になるやつが、ゴロゴロゴロゴロうるさくても、
なにかがなにかを食べ、また食べられ、また食べられる
私もいつか蛙かなんかに食べられる
果てしなく濡れた砂漠の上で
泥まみれで
なんかどこかが、
なんかなにかが、
ドッキングしたそんな頃
君と私の19、はたち
圧倒的に存在している別のもの
絶望的に大丈夫
すばらしい恋心でもって、
一瞬を信じさせてくれる恋心でもって、
なんで生まれてきたんですか、
そいでこんなに痛いんですか、
という 誰に向けていいかわからないナイフを忘れさせてくれる
なんか、恋心という名前のついた優しさでもって、
田んぼの脇に車を止めて、啓太君とキスしてました19歳
青い匂いが田んぼの水分から流れてきました5月頃?
好きというか恋というか、
蛙というか鴨というか有機農法というか
そんなこともいっさい知らん私は
別に車でセックスもいいですよ
あぜ道でもほら、月明かりに照らされて心地よさげ
月は基本的に見てみぬふり派の包み込み派
セックスという名前のついた会話でもって、
昨日と今日をつぶし塗り、明日の白紙を用意する
それが君と私の19、はたち
啓太君はその日、掛け持ちバイトの二つ目が終わった私
12時近くにくたくたになった私を迎えにきてくれた時
ポンコツ中古車の窓を手動であけて、
小さいオレンジの薔薇を一輪だけくれました
「なんで」
「お疲れ祝い」
「そんなんいやだ」
互いの違うことになってる器官をどうこうしながら、
けっきょく何がしたかったかといえば、わかりません
ただ、ああそうか
つながることがこのままであってくれれば
けれどもつながりきることはできないという
喜びも悲しみも幾年月、むかつくことに多分永遠
それでもなんか、救われた
それでもなんか、幸せだった
啓太君はいろいろくれた
小さい偽物の石が入った指輪をくれた時
なんか可愛らしいピンクの、手触りのいいケースを開けると
そこには缶ジュースのプルタブがちぎって入れられてた
鈍いスチールの輝き、ていうか輝かないけど
「なにこれ」
「うそうそ」
啓太君はポケットから、紫色のキラキラしたのがのってる
銀の指輪を出しました
びっくりしていた私をにひひと笑い、
本物は高くて買えないごめん、と言ったけど、
それは鉱物としてどうかなだけで、
めちゃくちゃ本物だったので、涙が出た
そんなことが重なり合って、
体が重なり合うよりも、重なったものごとが、
好きをつくっていたので、
逆に、車でセックス的なこともいいですよ、
と思っていたわけです
しかし肉体的ドッキング運動にはいたらず、
車の中で啓太君の横顔を見て、声を聞きながら
家出した家に帰るという
想像するだけでも怖いことから一分一秒でも逃げようと、
ていうか現実そのものから逃げようとしていた私の矢先、
ポンコツ車の開いた窓から、でかいこぶしが飛び込んできた
父は柔道黒帯で、世の悪い人をまとめてぶち込むことが生業だったので
その威力、私にはNASAくらいわかんない
啓太君は、飛突如ぶちこまれた他人のこぶしにびびっていただろう
痛いとは言わなかったけれど、痛かったに違いない
父にとって敵、親にとって敵、
したがって殴る相手もいつだって 私のはずだったのに
啓太君は共犯者
殴られても車から降りてひるまずに挨拶する
折り目正しい共犯者
「わたし悪い人じゃないし」
私は泣きながら、怖い父に蹴りを入れ、
しかしかすりもせず、こけそうになる
自分の弱さにうんざりして
「なんにも、どうでも」とかわけわかんないこと言いながら
そのままあぜ道方面に走って逃げた
父は何事か大声で叫び、家方面に向かって見えなくなる
私は開発途中の住宅街の
果てしなく他人事的な、へーベルハウス的な明かりをぬけて
果てしなく続くあぜ道に入り、 草が夜露に濡れて、足にからみつき
けっきょく、こけた
安い白のエナメルサンダルも気にいっていたし、
古着であっても私には新しい、水色のミニスカートだって
あと3シーズンは現役のつもりだったのに、
泥と草と、なんかよくわかんない紐みたいなものに汚されて
泣いた
植えたての苗を、靴が踏みつけてて、
緑の小さい、いのちこれからの植物と、
何回も死んだような化学的材質のサンダルが
ぜんぜんマッチせず、絵的にもダメな感じでいっぱいで、
よけい泣いた
生れ落ちた回転軸の
永遠にまわるミスマッチ
なんでこんなに合わないの?
啓太君は泣きじゃくる私の隣に座った
「おしり濡れるよ」
鼻水すすりながらそういっても、答えない
怒ってるのかな もう、誰にも怒られるのは嫌だな
啓太君でも嫌だな
しゃくりあげていると、
「とりあえず、まだ帰らなくていいし」
「なんで」
「帰りたいときは、一緒についてくから」
暗くて見えなかったけれども
啓太君の頬のかたっぽには、父の痕跡が残っていて
怖くて知りたくなかったけれども
それは私の痕跡でもあるのだから、
手探りでさすると、啓太君の肌はぼんやり、暖かかった
それは痛みの暖かさなのだと
私の痛みを啓太君の頬に伝染させてしまったのだと 思ったら
また涙と鼻水が出すぎて窒息しかかる
男でも、女でも、いいんだな
私が男でも、啓太君を好きになったかもしれない
ならべつに女でもいいかもしれない
そのときはじめて、どっちでもよくなった
啓太君と小さい古い家を借りて暮らし始め、
クラムチャウダーを作りながら、
給湯器が壊れてるから水が刃物レベルに冷たくてひりひりして、
でもクラムチャウダーがあたたかかったので、
なにもかも暖かかったので、ぐっすり眠る
毎日毎日、ご飯を作り、たくさん話しながら食べ、
寒い日は紅茶を飲んで眠る月日
あいかわらず、時おりセックスしちゃった 君と私の19、はたち
でもせっかくだから、もっと暖かくなればいいと思いながら
そのよくわからないけど
みたとこ明らかに異なる器官を使わせてもらったけれど
えらく気持ちよかった
シュウマイ食べてるときも、寝顔見ているときも
見られてるの知りながら薄目のときも
自分以外が使ったあとの、お風呂の匂い
石鹸と汗のちょっとすっぱい匂いを嗅ぐときも
同じくらい 気持ちよかった
独占したりされたりすることがセックスで
それは向かうところ自己と他者への破壊活動なんですか
あるいは強弱
あるいは売買
エロゴ問答の16歳はびょーんと過ぎ、
どっちでもよくなった
濡れた田んぼのあぜ道にはいろんな種類の生き物が
動くものも動かないものもふくめて、
いったいなにものなのかってことも みんなどっちでもよくなった
絶対的に断絶し
圧倒的に存在している別のもの
絶望的に大丈夫
砂漠だとしても、小さな水場におたまじゃくしを放てばいいのだと
勝手に蛙になるやつが、ゴロゴロゴロゴロうるさくても、
なにかがなにかを食べ、また食べられ、また食べられる
私もいつか蛙かなんかに食べられる
果てしなく濡れた砂漠の上で
泥まみれで
なんかどこかが、
なんかなにかが、
ドッキングしたそんな頃
君と私の19、はたち
2009年7月23日木曜日
多い日は安心できず悪夢を見る
耕されちゃって多い日
昼寝をする
合宿か修学旅行かわからんけど
女子が集団で移動して、
セーラー服という呪術に身をつつむ私
乗りかえが多すぎて
乗りかえが多すぎて
もう移動するために乗りかえてるのか
乗りかえるために移動してるのかわからんし
もうもうもうもう
私は女子とはぐれる
急いで行く急行
快く速く快速
特別急ぐよ特急もう!
どれに乗っていいのやら
わからないので駅前にいた野球選手の車に乗る
怒ってる私は野球のルールいっさい知らんし
野球と呼ばず、玉投げ玉打ちと呼んでるよ
にくたらしいことをわざわざ言う
野球選手は笑う
幻想ルールで成り立つ勝敗幻想がなければ
スポーツという幻想もないのだよ
言いながら、あくびしながら、ライオンみたく笑う
わりといい人だったから、
野球選手の母親の墓参りに付き合った
駅に戻ると女子の一人が探しにきてくれた
乗りかえが移動のためなのか
移動が乗りかえのためなのかわからなくなった旨を話す
うんうん、わかるわかる
でも私ら、乗りかえるために生きてるからね
と女子は言い、長い黒髪が風になびく
班長らしい女子からの携帯電話
そのときはじめてわたしは、
スーツケースをどこかに忘れてきたことに気がつく
班長女子、ざぶざぶ泣く
なんであんたが、ざぶざぶ泣くの?
私のスーツケースの中には、ルネッサンスだか北方ルネッサンスだか、
ポップアートだかわからないけれども、
えらいゲージツの人の100号の油絵が入っていたのに
どう責任取ればいいの班長として、と泣く
そんなでかいの、入りませんよ
でも入っていると泣く 乙女チックな電話声
班長は乙女であった!
昨晩旅館の大浴場で、乙女班長の指示のもと
女子がいっせいに腋毛を剃っていた景色を思い出し
また怒ってきたは私は
ていうか、スーツケースの中には、古い本が一冊入っていたし
他にもいろいろ、ブラジャーとか、ニップレスとか、ロリエ夜用とか、
フェミニーナ軟膏とか入っていて、そっちの方が問題なんですけど
問題じゃない! ゲージツの方が大問題!
乙女班長は泣きながら怒鳴る
乙女班長は腋毛をなかったことにするし
だみ声という凶器を知らずにいられる
探しに来てくれた女子が携帯電話に出て、
乙女班長をなぐさめ 私をなだめる
正しき乗りかえの順番を教えてくれて
親切な女子と、共に、列車の座席に
座る探しにくる、迎えにくるという行動に感謝して
あんた、お母さんみたいだね、と言ってみる
なんで?
わからんけどお母さんて、そんなかんじ
あんたのお母さんの話でしょ
私のお母さんは半分男でした 私も半分男です
でもあんた、ミニスカよくはいてるジャンお色気ジャン
あれも呪術です
ジュジュツ?
名前呼ぶと呪いがとけるのと同じ原理
ミニスカートの件なんですけど
いやだから、呪いを無効にする呪い
ようするに男の気を引きたいんでしょ
それもすごい呪いだけど、私自分の足は好き
ほらほらほらほら
でも足もニノウデも腋も除毛脱毛したことないし
マジで
それもそれで呪術がえし
ていうか、毛、薄いだけじゃん
ああ、ああ、女子の話はこうやってすれ違い
女子は何度も乗りかえる
生きるため、らしいので 置き忘れた荷物をあきらめて
ああ、ああ、もうもうずーっと乗りかえるのはしんどいです
そもそも、帰るのですか、まだ行くのですか
悪い夢を見た!と大声で叫び目を覚ます
激痛を抱えながら冷蔵庫をあけ、きゅうりとタッパーを取り出す
タッパーの中には、大量の卵子のような、もろみ味噌
使わなかった卵子はこれくらいだろうかしら
きゅうりを切って、もろみ味噌を乗せ
モロキュウ、という名前のものを食べる
もろ、きゅうり
もろ、おんな
拒んでも、向こうからやってくる
もうもういっそ、多い日には、
これくらいどばっと出血大サービスの卵子でいいような
でも呪いはさすが
徐々に徐々に、効いてくる
気がつけば、腋に三本、毛が生えている
昼寝をする
合宿か修学旅行かわからんけど
女子が集団で移動して、
セーラー服という呪術に身をつつむ私
乗りかえが多すぎて
乗りかえが多すぎて
もう移動するために乗りかえてるのか
乗りかえるために移動してるのかわからんし
もうもうもうもう
私は女子とはぐれる
急いで行く急行
快く速く快速
特別急ぐよ特急もう!
どれに乗っていいのやら
わからないので駅前にいた野球選手の車に乗る
怒ってる私は野球のルールいっさい知らんし
野球と呼ばず、玉投げ玉打ちと呼んでるよ
にくたらしいことをわざわざ言う
野球選手は笑う
幻想ルールで成り立つ勝敗幻想がなければ
スポーツという幻想もないのだよ
言いながら、あくびしながら、ライオンみたく笑う
わりといい人だったから、
野球選手の母親の墓参りに付き合った
駅に戻ると女子の一人が探しにきてくれた
乗りかえが移動のためなのか
移動が乗りかえのためなのかわからなくなった旨を話す
うんうん、わかるわかる
でも私ら、乗りかえるために生きてるからね
と女子は言い、長い黒髪が風になびく
班長らしい女子からの携帯電話
そのときはじめてわたしは、
スーツケースをどこかに忘れてきたことに気がつく
班長女子、ざぶざぶ泣く
なんであんたが、ざぶざぶ泣くの?
私のスーツケースの中には、ルネッサンスだか北方ルネッサンスだか、
ポップアートだかわからないけれども、
えらいゲージツの人の100号の油絵が入っていたのに
どう責任取ればいいの班長として、と泣く
そんなでかいの、入りませんよ
でも入っていると泣く 乙女チックな電話声
班長は乙女であった!
昨晩旅館の大浴場で、乙女班長の指示のもと
女子がいっせいに腋毛を剃っていた景色を思い出し
また怒ってきたは私は
ていうか、スーツケースの中には、古い本が一冊入っていたし
他にもいろいろ、ブラジャーとか、ニップレスとか、ロリエ夜用とか、
フェミニーナ軟膏とか入っていて、そっちの方が問題なんですけど
問題じゃない! ゲージツの方が大問題!
乙女班長は泣きながら怒鳴る
乙女班長は腋毛をなかったことにするし
だみ声という凶器を知らずにいられる
探しに来てくれた女子が携帯電話に出て、
乙女班長をなぐさめ 私をなだめる
正しき乗りかえの順番を教えてくれて
親切な女子と、共に、列車の座席に
座る探しにくる、迎えにくるという行動に感謝して
あんた、お母さんみたいだね、と言ってみる
なんで?
わからんけどお母さんて、そんなかんじ
あんたのお母さんの話でしょ
私のお母さんは半分男でした 私も半分男です
でもあんた、ミニスカよくはいてるジャンお色気ジャン
あれも呪術です
ジュジュツ?
名前呼ぶと呪いがとけるのと同じ原理
ミニスカートの件なんですけど
いやだから、呪いを無効にする呪い
ようするに男の気を引きたいんでしょ
それもすごい呪いだけど、私自分の足は好き
ほらほらほらほら
でも足もニノウデも腋も除毛脱毛したことないし
マジで
それもそれで呪術がえし
ていうか、毛、薄いだけじゃん
ああ、ああ、女子の話はこうやってすれ違い
女子は何度も乗りかえる
生きるため、らしいので 置き忘れた荷物をあきらめて
ああ、ああ、もうもうずーっと乗りかえるのはしんどいです
そもそも、帰るのですか、まだ行くのですか
悪い夢を見た!と大声で叫び目を覚ます
激痛を抱えながら冷蔵庫をあけ、きゅうりとタッパーを取り出す
タッパーの中には、大量の卵子のような、もろみ味噌
使わなかった卵子はこれくらいだろうかしら
きゅうりを切って、もろみ味噌を乗せ
モロキュウ、という名前のものを食べる
もろ、きゅうり
もろ、おんな
拒んでも、向こうからやってくる
もうもういっそ、多い日には、
これくらいどばっと出血大サービスの卵子でいいような
でも呪いはさすが
徐々に徐々に、効いてくる
気がつけば、腋に三本、毛が生えている
2009年7月21日火曜日
6分間のエロス
痛い痛い痛いの痛いのよ
今飛び出したのは虫かごのカブトムシ
いきものの音がした
皺くちゃになった紙幣を押し込んで
揉みくちゃにされたカバンをすみによけて
ああこれって昔なんどもなんども練習したあれね
甘いにおい ぬらぬらとした輝き
黄金律はそうまさにこんな角度
鏡の前で薄青い蛍光灯に照らされて
帰りたくないのだと気が付いた
竜胆ってどんな花?
聞き返さないから一度だけ答えて消して
顔は見ないからわざとらしく笑って
あなたの指紋のぐるぐるとした渦巻きが
電動式ドリルのように正確にまっすぐに
脇目もふらず縫い合わせていくの
掘るんじゃないの
縫うのだよ
かつてバラバラにしたモノクロームの写真を
痛い痛い痛いの痛いのよ
薄い羽だけはがさないで
断片と断片を閉じていくのね
そうやってべとべとと
あなたの指紋を残しながら
今飛び出したのは虫かごのカブトムシ
いきものの音がした
皺くちゃになった紙幣を押し込んで
揉みくちゃにされたカバンをすみによけて
ああこれって昔なんどもなんども練習したあれね
甘いにおい ぬらぬらとした輝き
黄金律はそうまさにこんな角度
鏡の前で薄青い蛍光灯に照らされて
帰りたくないのだと気が付いた
竜胆ってどんな花?
聞き返さないから一度だけ答えて消して
顔は見ないからわざとらしく笑って
あなたの指紋のぐるぐるとした渦巻きが
電動式ドリルのように正確にまっすぐに
脇目もふらず縫い合わせていくの
掘るんじゃないの
縫うのだよ
かつてバラバラにしたモノクロームの写真を
痛い痛い痛いの痛いのよ
薄い羽だけはがさないで
断片と断片を閉じていくのね
そうやってべとべとと
あなたの指紋を残しながら
おいてきたの
おいてきたの おいてけぼりを おいかけながら
水をたっぷりと含んだ雲が落ちてきそうで、
書いていた10枚目の便箋を破る。
なんとなく、が泳いでいる内田百閒を
なんとなく、閉じて、
3日前に煮込んだ豆を、30粒、口に入れる。
なんで?なんとなく。
10枚、3日、30粒。
生きている世界には数字が沢山だけれど数字なんてたいしたものじゃない。
というところでやけに、コクトーと同じ。
コクトー?
知らない人のことだよ。
あらんかぎりのちからでもって、
知ってるふりをしてるだけ。
会ったこともない。
なんとなく、が
思い込み、
思い込み、が
世界をつくる
「僕は世界を憎んでいる。けれどあなたのことを愛している。」
耳元でささやく誰かを道の途中で忘れてきて
ごめんなさい、ごめんなさい。
そして来た道は、トンネルの途中で消えて。
「僕は世界を愛している。そして君のことを憎んでいる。」
だから、手をつないで眠ればいい。
同じことだよ。
ぽとり、と
ぐしゃり、と
ばちゃん、と
外で音がするから、
15センチだけ窓を開けて覗いたら、
やっぱり、雲が落ちている。
アスファルトに沁み込んで、逃げてしまおうとするので、
こっそり持ち帰って一緒に暮らす。
あなたはまだ、水ではないのだから。
奥深い土の中に、消えることなんて出来ない。
でも大丈夫。私がいるから、大丈夫。
私は世界を愛そうと決めた。
そしてあなたのことはきっと、
ずっと、憎んでいたんだね
ずぅっと、愛していたんだね。
サラサーテをかける。
誰も何もつぶやいてなんていないけど、
私は答えたの。
聞こえないはずの問いに、
何度も答えたの。
水をたっぷりと含んだ雲が落ちてきそうで、
書いていた10枚目の便箋を破る。
なんとなく、が泳いでいる内田百閒を
なんとなく、閉じて、
3日前に煮込んだ豆を、30粒、口に入れる。
なんで?なんとなく。
10枚、3日、30粒。
生きている世界には数字が沢山だけれど数字なんてたいしたものじゃない。
というところでやけに、コクトーと同じ。
コクトー?
知らない人のことだよ。
あらんかぎりのちからでもって、
知ってるふりをしてるだけ。
会ったこともない。
なんとなく、が
思い込み、
思い込み、が
世界をつくる
「僕は世界を憎んでいる。けれどあなたのことを愛している。」
耳元でささやく誰かを道の途中で忘れてきて
ごめんなさい、ごめんなさい。
そして来た道は、トンネルの途中で消えて。
「僕は世界を愛している。そして君のことを憎んでいる。」
だから、手をつないで眠ればいい。
同じことだよ。
ぽとり、と
ぐしゃり、と
ばちゃん、と
外で音がするから、
15センチだけ窓を開けて覗いたら、
やっぱり、雲が落ちている。
アスファルトに沁み込んで、逃げてしまおうとするので、
こっそり持ち帰って一緒に暮らす。
あなたはまだ、水ではないのだから。
奥深い土の中に、消えることなんて出来ない。
でも大丈夫。私がいるから、大丈夫。
私は世界を愛そうと決めた。
そしてあなたのことはきっと、
ずっと、憎んでいたんだね
ずぅっと、愛していたんだね。
サラサーテをかける。
誰も何もつぶやいてなんていないけど、
私は答えたの。
聞こえないはずの問いに、
何度も答えたの。
淪落ファイナルヴァージョン
おちるのです おちるのです
こう言っていると本当におちるのです
湯飲みの中で檸檬がまがっているのは無理やり押し込んだからなので
そうやってすいもあまいも嗅ぎ分けているのです
ああそういえばかつて縁側ではじめたあの双六は
今はどこにあるのですか
私には唯一の思い出
サイコロが転がっていった軒下を掘り返したことが忘れられません
土の匂いは 食欲を刺激する
埋まっていたのは 錆びた湯たんぽだったのでした
鉄製の湯たんぽはそのままではちと熱い
ゆっくりとじんわりと火傷をしてしまう
魚の名前はなかなか覚えられませんが
うなぎを焼く時の匂いは睡魔をさそうでしょう
うなぎは魚ヘンになんと書くのですか
知っていたらはがきに大きく書いて送ってください
多分そのはがきが届く頃 私はあの家には居ないでしょう
すいません 聞いたような事を言って
おちるのです おちてくるのですがそのまえに
まずは耳掃除をしてください そのひざで
こう言っていると本当におちるのです
湯飲みの中で檸檬がまがっているのは無理やり押し込んだからなので
そうやってすいもあまいも嗅ぎ分けているのです
ああそういえばかつて縁側ではじめたあの双六は
今はどこにあるのですか
私には唯一の思い出
サイコロが転がっていった軒下を掘り返したことが忘れられません
土の匂いは 食欲を刺激する
埋まっていたのは 錆びた湯たんぽだったのでした
鉄製の湯たんぽはそのままではちと熱い
ゆっくりとじんわりと火傷をしてしまう
魚の名前はなかなか覚えられませんが
うなぎを焼く時の匂いは睡魔をさそうでしょう
うなぎは魚ヘンになんと書くのですか
知っていたらはがきに大きく書いて送ってください
多分そのはがきが届く頃 私はあの家には居ないでしょう
すいません 聞いたような事を言って
おちるのです おちてくるのですがそのまえに
まずは耳掃除をしてください そのひざで
女に似ていた
言葉の切れ端が、女に似ている
わたしの横顔が、女に似ている
知らない時代の夜が終わり
朝の白さに呆然としていた
物言わぬ人が物言わぬまま、沈黙を知らなかったから
物見えぬ人が物見えぬまま、ただ足音だけをたてているから
聞こえない人は聞こえないまま、ただ、びしょ濡れだったから
わたしは眠りながら生きていて
ほんの少し女に似ていた
遠い国
横たわる人は何も知らず
この耳元だけにささやいた
わたしが知らないすべての物事を
言葉の片鱗が朽ちてくれないから
驚いて砂をかけたけれど
もう、時間が、足りなかった
横たわる人の瞳の色を
知ることはできなかったのだ
ちぎれたなにか
もう一度だけたずねたい
永遠に失われた言葉と引き換えに
彼らはどこへ行ったのか
音楽が聴こえる
祝福は沈黙だけで充分だったのに
彼らはわたしの中に旋律を残したのだ
けれど、わたしはやがて知る
その古い楽曲こそが、だた、彼らの言葉だったのだと
そして一人、なす術もなく
見えないものの存在を問うた
どこですか
そこ、は、どこ、ですか
忘却だけが救いではなかったから
わたしはもう一度かばんに荷物を詰め込む
遠い国
見知らぬ人々の頬を撫でるわたしは
多分、あの時女に似ていた
ほこりにまみれた肌の色は、もうそれほど区別もつかず
ただ少しだけ、女に似ていた
わたしの横顔が、女に似ている
知らない時代の夜が終わり
朝の白さに呆然としていた
物言わぬ人が物言わぬまま、沈黙を知らなかったから
物見えぬ人が物見えぬまま、ただ足音だけをたてているから
聞こえない人は聞こえないまま、ただ、びしょ濡れだったから
わたしは眠りながら生きていて
ほんの少し女に似ていた
遠い国
横たわる人は何も知らず
この耳元だけにささやいた
わたしが知らないすべての物事を
言葉の片鱗が朽ちてくれないから
驚いて砂をかけたけれど
もう、時間が、足りなかった
横たわる人の瞳の色を
知ることはできなかったのだ
ちぎれたなにか
もう一度だけたずねたい
永遠に失われた言葉と引き換えに
彼らはどこへ行ったのか
音楽が聴こえる
祝福は沈黙だけで充分だったのに
彼らはわたしの中に旋律を残したのだ
けれど、わたしはやがて知る
その古い楽曲こそが、だた、彼らの言葉だったのだと
そして一人、なす術もなく
見えないものの存在を問うた
どこですか
そこ、は、どこ、ですか
忘却だけが救いではなかったから
わたしはもう一度かばんに荷物を詰め込む
遠い国
見知らぬ人々の頬を撫でるわたしは
多分、あの時女に似ていた
ほこりにまみれた肌の色は、もうそれほど区別もつかず
ただ少しだけ、女に似ていた
拝啓 ふくすけ様
お元気ですか
今朝起きて顔を洗うとき
ふとあなたのこと思い出しました
鏡に写った私の美しい顔をみてうっとりしていたら
あぁ、そういえば昔ふくすけさまがいたな、
と思い出したので、自分でもびっくりしてしまって……
お変わりはありませんか
私のほうはこんな具合で
昨日と今日と明日の境界についての研究が
いまだ手付かずの状態で
ほんとうにいやになってしまいます
はっきり申し上げて
私はあなたのことがそれほど好きではなく
あなたも私のことをこころよくは思っていなかった
と記憶していますがいかがですか
いかがですかと聞いて答えの返ってこない時間の隙間が、
どうしてこれほど居心地が良いのでしょう
あ!インクをこぼしてしまいました
この便箋の端についた青い紙魚
あなたのところにそのまま届いてしまうけれど
どうか、可愛がってやってください
これはけっして、飲み物でも食べ物の跡ではなく、
ましてや涙などでもありませんから、ご了承ください
ただのインクです
時を告げる機械のような、曖昧なものを見つめていて
刻まれる時を知るとはなんと楽しいことか、
と思った次の瞬間に、
殺意にも似た苛立ちに支配されるようなことがあるのですがいかがですか
ほんとうにいやになってしまいますけれど、
何故か楽しくて笑ってしまって
今日は日がな一日
隠れるように生活してみました
ふくすけさまはきっと驚かれるでしょうけれど
今、とはそんな時代です
なにやら箱のなかでは
多くの人間がおよそ意味のわからないことを言っては笑っております
ものすごく明るい光と聞いたこともない音楽が流れ出しております
それから
その、今、すら切り取って貼り付けて、あなたに届けることだって……
書きかけたあの物語は
もう終わったのですか
語り始めたあの口伝は
いま、何処を歩いているのですか
私は
部屋の鍵をあんまり何度も失くしてしまうので
もう、扉を開け放しております
ほんとうに
いやになってしまいますが
元気です
それでは、さようなら
追伸
実ったばかりの青梅をあまり食べ過ぎませんように
毒性があるので、エレガントに死んでしまいますよ
あなたにはずっとどこかで
元気に暮らして欲しいと願っております
今朝起きて顔を洗うとき
ふとあなたのこと思い出しました
鏡に写った私の美しい顔をみてうっとりしていたら
あぁ、そういえば昔ふくすけさまがいたな、
と思い出したので、自分でもびっくりしてしまって……
お変わりはありませんか
私のほうはこんな具合で
昨日と今日と明日の境界についての研究が
いまだ手付かずの状態で
ほんとうにいやになってしまいます
はっきり申し上げて
私はあなたのことがそれほど好きではなく
あなたも私のことをこころよくは思っていなかった
と記憶していますがいかがですか
いかがですかと聞いて答えの返ってこない時間の隙間が、
どうしてこれほど居心地が良いのでしょう
あ!インクをこぼしてしまいました
この便箋の端についた青い紙魚
あなたのところにそのまま届いてしまうけれど
どうか、可愛がってやってください
これはけっして、飲み物でも食べ物の跡ではなく、
ましてや涙などでもありませんから、ご了承ください
ただのインクです
時を告げる機械のような、曖昧なものを見つめていて
刻まれる時を知るとはなんと楽しいことか、
と思った次の瞬間に、
殺意にも似た苛立ちに支配されるようなことがあるのですがいかがですか
ほんとうにいやになってしまいますけれど、
何故か楽しくて笑ってしまって
今日は日がな一日
隠れるように生活してみました
ふくすけさまはきっと驚かれるでしょうけれど
今、とはそんな時代です
なにやら箱のなかでは
多くの人間がおよそ意味のわからないことを言っては笑っております
ものすごく明るい光と聞いたこともない音楽が流れ出しております
それから
その、今、すら切り取って貼り付けて、あなたに届けることだって……
書きかけたあの物語は
もう終わったのですか
語り始めたあの口伝は
いま、何処を歩いているのですか
私は
部屋の鍵をあんまり何度も失くしてしまうので
もう、扉を開け放しております
ほんとうに
いやになってしまいますが
元気です
それでは、さようなら
追伸
実ったばかりの青梅をあまり食べ過ぎませんように
毒性があるので、エレガントに死んでしまいますよ
あなたにはずっとどこかで
元気に暮らして欲しいと願っております
ユウウツなキブツ
一個割って
ニ個割って三個割って
四個割って五個割って
六個割って七個割って
八個割って九個割って
十個目を割ろうとした君は君の影は細く長くゆがんで伸びた
気が付いたらアロエの植木鉢はもうずっと前にベランダから落ちて
たぶん年老いた僕のように転ぶ眠る
ねえ君は取り返しのつかないことをしているのだけれど置き去りにするよ
置き去りにしてくれ僕はキブツ
もう何も所有しないただのキブツ
初めてのことだったからわからなかったのだと君は言い
十個目に手を伸ばす前に窓際に座り込んで
昨晩のグラスをかたむけたけれど残っていたのは三日月の跡
残してくれ飲み干さないでくれとあれほどいったのに
赤い液体が残したのはただのキブツ
ひりひりと喉に残るのは君と君の体の一部だったのか
もうわからないほど僕は朽ちかけているから
さあもう一度立ち上がってくれと声を上げたいのに空気すらこぼれないから
君は君の人差し指は空っぽのグラスを忘れないのだね 二度と
そして僕がかたちをつけた君は君の奥は惨めなキブツで満たされている
ニ個割って三個割って
四個割って五個割って
六個割って七個割って
八個割って九個割って
十個目を割ろうとした君は君の影は細く長くゆがんで伸びた
気が付いたらアロエの植木鉢はもうずっと前にベランダから落ちて
たぶん年老いた僕のように転ぶ眠る
ねえ君は取り返しのつかないことをしているのだけれど置き去りにするよ
置き去りにしてくれ僕はキブツ
もう何も所有しないただのキブツ
初めてのことだったからわからなかったのだと君は言い
十個目に手を伸ばす前に窓際に座り込んで
昨晩のグラスをかたむけたけれど残っていたのは三日月の跡
残してくれ飲み干さないでくれとあれほどいったのに
赤い液体が残したのはただのキブツ
ひりひりと喉に残るのは君と君の体の一部だったのか
もうわからないほど僕は朽ちかけているから
さあもう一度立ち上がってくれと声を上げたいのに空気すらこぼれないから
君は君の人差し指は空っぽのグラスを忘れないのだね 二度と
そして僕がかたちをつけた君は君の奥は惨めなキブツで満たされている
そのひぐらし
何処までも続く太陽と月のおいかけっこ
仲間はずれにされたのは足のおそい夕立
ねえあなたの声がさきほどからきこえないよ
そうだよもう一度言ってほしいのよ
眠っていたのだと思うのならそれは間違いだから
早いうちにやりなおさないとすぐにかたまってしまう
はてしない砂の丘に立って
あなた達のおいかけっこを眺めるのには
実のところ もう あきあき なのだ
膨張した色と密度の隙間は
人ひとり通れるほどの大きさ
くぐる もぐる かくれる こともできるのに
ねえあなたの声がさきほどからきこえないよ
そうだよもう二度とききたくないよ
朝ごはんたべたら本とペンだけ持って出かけるから
すぐには帰れないから覚悟しておいてほしい
何処までも続く太陽と月のおいかけっこ
仲間はずれにされたのは足のおそい夕立
雨が降ったら帰ってくる
おそらく
何も持たずに帰ってくるから
その時話しかけるのはやめにして
たぶんわたしは何も欲しがらないだろうから
仲間はずれにされたのは足のおそい夕立
ねえあなたの声がさきほどからきこえないよ
そうだよもう一度言ってほしいのよ
眠っていたのだと思うのならそれは間違いだから
早いうちにやりなおさないとすぐにかたまってしまう
はてしない砂の丘に立って
あなた達のおいかけっこを眺めるのには
実のところ もう あきあき なのだ
膨張した色と密度の隙間は
人ひとり通れるほどの大きさ
くぐる もぐる かくれる こともできるのに
ねえあなたの声がさきほどからきこえないよ
そうだよもう二度とききたくないよ
朝ごはんたべたら本とペンだけ持って出かけるから
すぐには帰れないから覚悟しておいてほしい
何処までも続く太陽と月のおいかけっこ
仲間はずれにされたのは足のおそい夕立
雨が降ったら帰ってくる
おそらく
何も持たずに帰ってくるから
その時話しかけるのはやめにして
たぶんわたしは何も欲しがらないだろうから
わたしの生活水準
ドアを開けるとその身なりのいい人は何もいわず箱を差し出して気が付くともう誰もいなくて
私は夢でも見ていたのかと誰もいない廊下でつぶやいたけど誰もいない。
そうかもうそんなに時間がたっていたのね私ときたらここ数日何も食べてなくておなかと背中がくっつきそうでそれでいて実は手のひらのしわとしわを合わせたかったのだけど
箱を持っていることに気が付いた。
箱を振るとゴロンとガラガラとコトコトとサワサワといって
ひょっとしたら食べるものでも入っているのじゃないかしらだとしたらはやく冷蔵庫に入れないといけないでもその前に冷蔵庫のコンセントを差し込まなきゃね。
飲め!飲み干すんだ!はやく!
箱からそんな声が聞こえたので、あわてて、開けた。
中にはなんと8年前に捨てた男が入っていて、しかも一人じゃなくて100人くらいいたので、笑う。
いつからそんなにあなた増えたの? しかも小さくなって。
いいから、飲め!時間がない早くするんだ!
あんまり必死なものだから、ほんとにいいの? と聞きもせず踊り食い。
あらやだぺろりといってしまったわ、はしたない。
ドアを開けるとまた身なりのいい人が立っていて、今度はいなくなる前に言ってやったわ。
食べてないけど私、お腹すいてないし!
私は夢でも見ていたのかと誰もいない廊下でつぶやいたけど誰もいない。
そうかもうそんなに時間がたっていたのね私ときたらここ数日何も食べてなくておなかと背中がくっつきそうでそれでいて実は手のひらのしわとしわを合わせたかったのだけど
箱を持っていることに気が付いた。
箱を振るとゴロンとガラガラとコトコトとサワサワといって
ひょっとしたら食べるものでも入っているのじゃないかしらだとしたらはやく冷蔵庫に入れないといけないでもその前に冷蔵庫のコンセントを差し込まなきゃね。
飲め!飲み干すんだ!はやく!
箱からそんな声が聞こえたので、あわてて、開けた。
中にはなんと8年前に捨てた男が入っていて、しかも一人じゃなくて100人くらいいたので、笑う。
いつからそんなにあなた増えたの? しかも小さくなって。
いいから、飲め!時間がない早くするんだ!
あんまり必死なものだから、ほんとにいいの? と聞きもせず踊り食い。
あらやだぺろりといってしまったわ、はしたない。
ドアを開けるとまた身なりのいい人が立っていて、今度はいなくなる前に言ってやったわ。
食べてないけど私、お腹すいてないし!
僕はあの時途方にくれて空をみていた。
僕はあの時空を見て
濡れた月に手を伸ばした
夜は白く
ぬめった
教えられたことは
沢山あった
月は太陽の光を反射している
のだそうだ
けれど僕は
月はそれ自身で輝いている
と思うことにした
それから朝になる
昇る太陽は燃えて
世界は焼ける
そうなのかもしれない
大気を焦がす陽光に
一抹の畏怖を持つことは
愚かなことなのだろうか
夢と現実
眠りと死
その区別もつかなかった時代
月までの距離
太陽の重さ
知らなかった時を
僕は時折途方にくれて
ただ空を見上げる
僕もまた見つめられているのか
それにしても
割れ目からこぼれていく水のように
何も伝えることができない
空を見上げまぶたを閉じた瞬間
時は膨大に
誤解しているのだ
そして僕はもう一度濡れた
濡れた月に手を伸ばした
夜は白く
ぬめった
教えられたことは
沢山あった
月は太陽の光を反射している
のだそうだ
けれど僕は
月はそれ自身で輝いている
と思うことにした
それから朝になる
昇る太陽は燃えて
世界は焼ける
そうなのかもしれない
大気を焦がす陽光に
一抹の畏怖を持つことは
愚かなことなのだろうか
夢と現実
眠りと死
その区別もつかなかった時代
月までの距離
太陽の重さ
知らなかった時を
僕は時折途方にくれて
ただ空を見上げる
僕もまた見つめられているのか
それにしても
割れ目からこぼれていく水のように
何も伝えることができない
空を見上げまぶたを閉じた瞬間
時は膨大に
誤解しているのだ
そして僕はもう一度濡れた
2009年7月20日月曜日
彼岸花咲いたのかそれは悲しい願い
水車が
橋の下で
まわる 転がる
あの時押し倒された右の腕と左のほほと少し後ろの背骨が軋んでいる
咲く花があったから枯れる花があったのだと教わって香りをかいだ墓で
水が流れるのなら大きなものも流せるのでしょうか年に一度くらいと聞いて
答える前に去っていった無口な初老の紳士は帽子を深くかぶっていた
振り返ることは拾うことだと捨てることだと
散歩しながら道で振り返る練習をした日々に
彼岸花の群生は決して見て見ぬふりをしないのだから
一生この花を摘んで旅しなければなりませんねそうですね
尋ねたのはろくでなし
答えを知りたくない暇つぶし
小石をけるところころと転がっていくから追いかけようとして
追いかけようとしている時間と追いかけようと考えている時間の間に
蜘蛛の糸をひいたのだ だから間に合わない もう間に合わないのだと
彼岸花のせいにして
彼岸花の首を折るのはやめにして
あふれそうだからこぼすのだという言い訳を聞くのが
精一杯なのだね彼岸花
赤いのか赤かったのか彼岸花
流れている水の中で濡れていたのは彼岸花
橋の下で
まわる 転がる
あの時押し倒された右の腕と左のほほと少し後ろの背骨が軋んでいる
咲く花があったから枯れる花があったのだと教わって香りをかいだ墓で
水が流れるのなら大きなものも流せるのでしょうか年に一度くらいと聞いて
答える前に去っていった無口な初老の紳士は帽子を深くかぶっていた
振り返ることは拾うことだと捨てることだと
散歩しながら道で振り返る練習をした日々に
彼岸花の群生は決して見て見ぬふりをしないのだから
一生この花を摘んで旅しなければなりませんねそうですね
尋ねたのはろくでなし
答えを知りたくない暇つぶし
小石をけるところころと転がっていくから追いかけようとして
追いかけようとしている時間と追いかけようと考えている時間の間に
蜘蛛の糸をひいたのだ だから間に合わない もう間に合わないのだと
彼岸花のせいにして
彼岸花の首を折るのはやめにして
あふれそうだからこぼすのだという言い訳を聞くのが
精一杯なのだね彼岸花
赤いのか赤かったのか彼岸花
流れている水の中で濡れていたのは彼岸花
大きな果実の残像
罪をして罪をして罪をしたから
どうにもならないわよあたりまえよ
ちょっとまってそれは3ヶ月前の夜と霧と煙の側にのさばっていた
夢の話いいえちがう夢のような話
いいかげん起きなさいと揺り起こす手には火傷の跡があって
それはもう瘡蓋になっていた
あなたがあの有名なボッカチオだったのですかそれともS
知りませんそんなことはどうでもいいのでしょうたぶん ね
走り出した貨物列車はえるどらどには行かず
片目を閉じたまま走り続けるからきっと朝には
遠いお空の真ん中
実り始めたのは新しい小さな
嘘のような光
走り出したのは貨物列車ではなくて
3番めの車両には折り重なるようにして眠る私とあなたの半分
あなたが誰なのかわかるまで私起きません
そう決めたのです一週間前のことです
白々と明け始めたお空というか天井のようなものは
嘘のような光を本当にしてからに 丸い
そうこうしているともう間違えてしまっている
罪を摘んだのは誰の命令だったのかあなたが答えないうちは
立面図的あるいは平面図的なそれに指一本触れません
今さら名乗っても遅いのですと言う隙もなく
強引なミツバチはまっしぐらに掘ろうとしている
嘘か真かわからないような
禍々しい あの果物は 丸い
どうにもならないわよあたりまえよ
ちょっとまってそれは3ヶ月前の夜と霧と煙の側にのさばっていた
夢の話いいえちがう夢のような話
いいかげん起きなさいと揺り起こす手には火傷の跡があって
それはもう瘡蓋になっていた
あなたがあの有名なボッカチオだったのですかそれともS
知りませんそんなことはどうでもいいのでしょうたぶん ね
走り出した貨物列車はえるどらどには行かず
片目を閉じたまま走り続けるからきっと朝には
遠いお空の真ん中
実り始めたのは新しい小さな
嘘のような光
走り出したのは貨物列車ではなくて
3番めの車両には折り重なるようにして眠る私とあなたの半分
あなたが誰なのかわかるまで私起きません
そう決めたのです一週間前のことです
白々と明け始めたお空というか天井のようなものは
嘘のような光を本当にしてからに 丸い
そうこうしているともう間違えてしまっている
罪を摘んだのは誰の命令だったのかあなたが答えないうちは
立面図的あるいは平面図的なそれに指一本触れません
今さら名乗っても遅いのですと言う隙もなく
強引なミツバチはまっしぐらに掘ろうとしている
嘘か真かわからないような
禍々しい あの果物は 丸い
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