一個割って
ニ個割って三個割って
四個割って五個割って
六個割って七個割って
八個割って九個割って
十個目を割ろうとした君は君の影は細く長くゆがんで伸びた
気が付いたらアロエの植木鉢はもうずっと前にベランダから落ちて
たぶん年老いた僕のように転ぶ眠る
ねえ君は取り返しのつかないことをしているのだけれど置き去りにするよ
置き去りにしてくれ僕はキブツ
もう何も所有しないただのキブツ
初めてのことだったからわからなかったのだと君は言い
十個目に手を伸ばす前に窓際に座り込んで
昨晩のグラスをかたむけたけれど残っていたのは三日月の跡
残してくれ飲み干さないでくれとあれほどいったのに
赤い液体が残したのはただのキブツ
ひりひりと喉に残るのは君と君の体の一部だったのか
もうわからないほど僕は朽ちかけているから
さあもう一度立ち上がってくれと声を上げたいのに空気すらこぼれないから
君は君の人差し指は空っぽのグラスを忘れないのだね 二度と
そして僕がかたちをつけた君は君の奥は惨めなキブツで満たされている
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