「出産方面」: ユウウツなキブツ

2009年7月21日火曜日

ユウウツなキブツ

一個割って
ニ個割って三個割って
四個割って五個割って
六個割って七個割って
八個割って九個割って
十個目を割ろうとした君は君の影は細く長くゆがんで伸びた
気が付いたらアロエの植木鉢はもうずっと前にベランダから落ちて
たぶん年老いた僕のように転ぶ眠る

ねえ君は取り返しのつかないことをしているのだけれど置き去りにするよ
置き去りにしてくれ僕はキブツ
もう何も所有しないただのキブツ
初めてのことだったからわからなかったのだと君は言い
十個目に手を伸ばす前に窓際に座り込んで
昨晩のグラスをかたむけたけれど残っていたのは三日月の跡
残してくれ飲み干さないでくれとあれほどいったのに
赤い液体が残したのはただのキブツ
ひりひりと喉に残るのは君と君の体の一部だったのか
もうわからないほど僕は朽ちかけているから
さあもう一度立ち上がってくれと声を上げたいのに空気すらこぼれないから
君は君の人差し指は空っぽのグラスを忘れないのだね 二度と

そして僕がかたちをつけた君は君の奥は惨めなキブツで満たされている

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