「出産方面」: 8月 2011

2011年8月24日水曜日

夏の骨

骨盤というのは、むろん骨です。
最近なんやか広告で「骨盤ダイエットでマイナス18キロ」とか見かけますが、何ダイエットにせよ20キロもの肉なり脂肪なりが身体からなくなるって、どんな感覚なのでしょうね。いったい骨盤をどうすればそんなことになるのか詳しく見てないですが、どちらにせよ新たな身体に慣れるまでの違和感、それは想像に難く、体験してみたいとも思います。
しかし今の私から18キロも減らしたら、貧乳はともかく、肋骨でいろんなモノが洗えてしまいそうですので、憧れの豊満さを入手してから手放すことは考えようかと。手に入れたいと欲したり手放したいと望んだり、まったくワガママなことです。

しかし身体とは何であるか。頭とか脳みそとか心とかが各自ひとつしか持てないということと同じくらい、生き物に各自ひとつしかボディがないということについて、疑問と感慨が同時多発してしまいます。『マルコビッチの穴』とパーマンのコピーロボットの事を考えて、時折同じ姿勢で二時間くらい座ってることがあるのですが、そんなんだから骨盤が歪む。

プロテインでふくらませ筋肉プロテクターを強化しても、黄色い脂肪を食事制限で減らしても、骨は骨。そして骨盤は骨。骨は硬い。しかし骨盤が歪むとかいうのんは、骨盤という名称でくくられた沢山の小さい骨の集合体がどうにかなるわけではなく、周囲の筋肉が硬くなったり伸びたり縮んだりしているんだよと、中医の先生に教えてもらいました。

実は三年くらい前から肩甲骨に言い知れぬ痛みが走るようになり、慢性化しそうな気配だったのですが、去年の夏はマックスひどかったです。左側の肩甲骨から始まって首、背中が、こう、ピキッと。最終的には左足まで電気が走るようになり、やばい、これでは右側人間になってしまうと思ったのか思わなかったのか。仕事がたて込んでいて、仕事なのだからそれはなんらかの職業病的症状が出るのは覚悟してました。どんな仕事でも、反復と継続の条件が揃ってしまうと色んな症状が出てきますよね。
一日13時間立ち仕事をしていた頃には、足のむくみとはんぱない生理痛。
いきなり実務に使わないといけなくなった建築CADソフトと毎日8時間向き合っていたときには、眼性疲労と頭痛。あと建物をみると自動的に平面図と立面図と展開図が頭の中でくるくる回るという幻覚に襲われてもいました。
ひたすら調査&文書作成していた時期は、目の中で、文字が虫のごとく這い回っていたし。
肉体労働もデスクワークも、身体にとっては過酷です。家事労働も含めると、人って身体を使てなにかをし、疲労し、蓄積し、やがて痛みや重みとなり、使っていた身体に心を使われる。

と書くとペシミスティックですし、別に身体二元論をとっているわけではないのですが、身体が痛い時って、身体がすっごい勢いでなんか喋ってくる、説教してくる、懇願してくる、脅迫してくる、とは感じます。
去年の夏は、一日中誰かが耳元で「オレ身体っす、痛いっす、やばいっす」とささやいてるようなものでした。フライパン持つたび左腕がもげるかという痛み以上に、そんな声がきこえてしまうと、別の意味でタイヘンな事になる。

色々身体を使っているうち、根本的な問題は骨盤の歪みから来てるのだと思ったわけです。だってあなた、私のハイヒールってば基本が10センチ高だし、仕事のことは細かく言いませんが、文章書いてる時の姿勢の悪さ、なにか文句あるんですかくらい組む足、これで歪んでなかったら、私の身体はゴムかガムか。

そんなわけで去年の夏の苦痛は、ヨーガに加え、鍼灸、中医を取り入れて乗り切りました。
で、今年。睡眠の質が良くなったからか、ストレッチの内容を改善したからか、だいぶ楽になったけれど、やっぱりちょっと痛い。時々けっこう痛い。
去年のアレに舞い戻らないように、針はちょこちょこ行っていたのだけれど、東ばかり見てないで西もどうだと整形外科に行ってきましたよ。

注:イメージです。©入ってます。

私ハタチ頃にめちゃくちゃな事故にあっているのですが、事故の記憶が曖昧でどんだけのキカイに写真取られたか覚えてません。とりあえず骨は問題なかったのだけれど、今でも左足には15センチ程の裂傷痕があります。だから左側が痛くなるのだ、左足の骨は折れなかったけど縮んでるとか、背骨なり腰椎なり頚椎なり、左側が歪んでいて、その歪みが肩甲骨や骨盤を引っ張っているのだとかいう物語が、整形外科の待合室のツルッとした茶色いソファに座る頃には、プロットまで構成されていましたよ。
で、意識不明ではない状態で、バッチリあらゆるところのレントゲンをとられました。さぁこれでわかるやろ、どこがどのように歪んでいるのかが!左側の秘密が!
と期待してたのですが、めちゃくちゃまっすぐです、とお医者さん談。旦那を待合室で二時間待たせた挙句に。
でもまっすぐすぎて、逆に首とか痛めやすいらしいです。まったく骨というのも、メンドクサイ人ですね。
あと「骨盤の歪み」というのは、整形外科ではわからないということがわかりました。先の中医の先生が言うように、多くは骨の問題じゃないってことなんでしょうね。

できたらこんな骨に生まれてきたかった。

猫の骨 注:イメージですって。中国のサイトで販売してました。

なんか骨少なくない?そもそも骨盤というものじたいも人間ほど複雑じゃなさそうで、歪むもなにもなさそうで、うらやましいな。

しかしこっからやり直そうというのは、母の胎内から出てしまった以上、無理な話。
人間はゴムでもガムでもないのだという現実をうけいれて、あ、こっちのお尻硬くなってる、とかいうのんを、身体と心にお問い合わせする毎日です。